6月8日 産経新聞より

さいたま赤十字病院で常勤小児科医が全員退職の危機 新都心移転が影響か

2012.6.8 21:23 (1/2ページ)

 さいたま赤十字病院(さいたま市中央区)で、小児科の常勤医師4人全員が退職の意向を示していることが8日、同病院への取材で分かった。同病院はすでに小児科専門外来への新規紹介患者の受け入れを中止、ハイリスク妊婦の受け入れも制限した。同病院は平成27年度に県立小児医療センター(同市岩槻区)とともにさいたま新都心に移転することが決定。高度医療は同センターが引き受けるため、医療関係者からは「軽度の患者しか診察できなくなると思った医師がやる気をなくしたのではないか」との指摘もある。

 同病院によると、小児科の常勤医は部長、副部長を含め4人。全員が秋ごろまでの退職を希望している。理由について同病院は「具体的には明かせないが、医局に戻る医師もいるようだ」としている。

 このため同病院では、今月から心疾患や糖尿病、脳性まひなどの小児科専門外来については、新規紹介患者の受け入れを一時中止。未熟児などに対応するため小児科医が立ち会うハイリスク妊産婦については「受け入れは困難」として予約に制限を設けた。期限は「未定」としている。

 この問題について、同病院の担当者も県の担当課も、新都心への移転問題は「関係ない」としている。ただ、医師でもある日下部伸三・埼玉県議(無所属)は、「県立小児医療センターと一体的に整備されて別棟で隣接するのでは、さいたま赤十字病院の小児科の存在意義が乏しくなるのではないか」と指摘する。移転後、重篤な患者の対応は小児医療センター、さいたま赤十字病院はそれ以外と分担が決まっているからだ。

別の医療関係者は「日赤など公的な病院は民間と比べて医師の収入が低い。しかし、高度な設備でさまざまな患者の診察ができ、経験を積めるメリットがある。それなのに、風邪や腹痛の子供しか診られなくなるのでは、医師のモチベーションにかかわる」と明かした。

 移転問題に関しては、今年の県議会2月議会で移転先の土地購入費約123億円が可決されたが、依然、一部で慎重論もくすぶっている。さいたま市でも6月議会に補正予算案として土地購入費を提案中。市議会では可決の公算だが、ある市議は「県議からわざわざ『慎重に審議せよ』といわれた市議がいたようだ。問題をこじらせて移転を遅らせたいのでは」と裏事情を“解説”した。