NHK 首都圏ネットワーク 特集より

首都圏ネットワーク

3月28日放送
「首都圏の大都市はいま」
- 進まない「さいたま新都心」の街づくり -

NHKさいたま 山澤 美貴子 写真
NHKさいたま
山澤 美貴子

シリーズでお伝えしている「首都圏の大都市はいま」。3回目は、首都機能の分散を目的に整備された「さいたま新都心」です。
政令指定都市の「さいたま市」が街づくりを担っていますが、その可能性を十分に生かしきれていません。その現状と課題を取材しました。

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12年前、広大な旧国鉄操車場跡地に誕生した「さいたま新都心」、東京の首都機能を分散させようと、2兆円かけて整備されました。
合同庁舎には国の10省庁18機関が移転してきました。
しかし、玄関口となるJRさいたま新都心駅の駅前の1等地は、空き地のまま駐車場となっています。
市民からは、「工事をしている様子も無いし、先日もビルの上の食堂から見ると、ここだけ空いている。雪が降った後だったのでここだけ真っ白なんですね。なんで長い間空き地のままなのかわかりませんね」「確かに1等地でいいところなので何か活用できればいいのにと思います」といった声が聞かれます。
計画では、5万7000人が働くはずでしたが、2万6000人にとどまっています。
新都心の中核として期待された中心部の開発が、進まないためです。

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この「さいたま新都心」を抱えるさいたま市は、旧国鉄操車場跡地があった浦和、大宮、与野の3市が合併して、10年前に政令指定都市として誕生しました。

内閣官房副長官として「さいたま新都心」の整備にかかわった石原信雄さんは、政令指定都市になったことでさいたま市が街づくりを担うと期待したと、当時の経緯を次のように説明します。

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「私が内閣におりますころ、国の中央の機関を地方に移せと、法律が義務づけたわけです。関東地方の全体をにらんだ場合に、都心から移す場所としては交通体系その他から、どこが1番ふさわしいか検討した結果、政府の関係機関を、現在のさいたま市の旧国鉄操車場跡地に移すことを決めたわけです。政令指定都市の場合は、市独自でまちづくりを決められるわけです。」

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当初、新都心の中心部には、さいたま市役所を移転させる新しい庁舎の建設が、有力と見られていました。
しかし、さいたま市は、旧浦和市役所を使い続け移転しませんでした。

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方針を転換し、民間誘致による「さいたまタワー」の実現を目指しました。
しかし「東京スカイツリー」の建設が決まり、構想は振り出しに戻りました。
次に商業ビルを誘致しましたが、リーマンショック後、計画は再び白紙に戻ってしまい、市の街づくりは次々につまづきました。
さいたま市政策局林健蔵理事は、「これまで、かなりの構想がありました。市の都市振興計画もそうですし、都市計画のマスタープランもそうです。そうした中で我々は一生懸命、誘致活動をやってきました」と話します。

さいたま新都心の街づくりに行き詰まったさいたま市は、埼玉県や土地の所有者と利用方法を検討することにしましたが、街づくりの方向性を示すことはできなかったといいます。

埼玉県都市整備政策課の槍田義之課長は、「特にさいたま市から提案は出ませんでした。地域のまちづくりは、基本的には住民に身近な市町村が、そこに暮らす住民と築いていくのが大原則ですので、さいたま市が、地域の方々と新都心のまちづくりを積極的に行うべきだと期待しています」と市の一層の取り組みを促します。


そうした中、東日本大震災後の去年6月、ようやく計画が動きだしました。
新都心を防災や医療の拠点にしようという計画で、さいたま市内の2つの病院を移転することにしたのです。

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新都心内にある「さいたまスーパーアリーナ」は、震災時に帰宅困難者を受け入れた実績があります。
また新都心には、首都圏の防災拠点となっている国土交通省関東地方整備局もあります。
市の提案がないなか、計画は県の主導で決まりました。

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しかし、計画の実現には多くの課題があります。
土地の30%を72億円で取得した県は、20年間で金利負担が22億円と重荷になっています。今後、さらに市と県は、空き地の半分以上を新たに購入する必要があり、財政負担は避けられません。

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また、住民の間からも批判が出ています。
計画では、さいたま市の北部にある「県立小児医療センター」が、10キロほど離れた新都心地区に移ることが打ち出されていますが、これでは、地域の医師不足を加速させることにもなりかねないというのです。
お母さんたちからは、「交通の便などがいいことで医師が集まるから新都心はいいという答えが返ってきましたが、子どもを抱えて通院する身にもなって欲しい」「渋滞で時間が読めないので診察の予約時間に行けるかどうか。その間に子どもが吸入している酸素ボンベが切れたらどうなるかと心配です」といった声が聞かれました。

「さいたま新都心」を市の街づくりの中でどう位置づけていくのか、政令指定都市「さいたま市」の役割があらためて問われています。


取材したさいたま放送局の山澤美貴子記者は、「新都心の土地は、県や市が税金で用地を取得した重要な財産です。有効に活用しなければ税金を無駄にすることになるので早い整備が求められます。さいたま新都心は、東北や北信越につながる多くの新幹線が通過する交通の要所であることを考えると、『防災と医療の拠点』としての潜在的な可能性は高いと言えます。それだけに、さいたま市が住民の理解を得た上で、政令指定都市としての権限を生かし、こんどこそ主体的に新都心の将来の街づくりをリードすることが、いま求められていると思います」と指摘します。