b8606e65.jpg3月1日(木)、一般質問3日目。自民党埼玉県議団伊藤雅俊県議(中央区選出)が、新都心第8-1A街区への病院移設問題などを質した。

上田清司・埼玉県知事をはじめ、県執行部は、今日の答弁に限ったことではないが、本プロジェクトに関しては、「総合周産期母子医療センター」と「高度救命救急センター」を設置することの必要性を、執拗に強弁しているのが気になります。

「にぎわいのまちづくりからのコンセプト変更」については、両病院の移設で1日当り3,000人が何らかの形で通り、何らかの形で影響がある・・・。「地元住民への説明」や「対策」については、説明して参りました・・・努めて参ります・・・できるだけ配慮します・・・。

病院が移転すること、病院が移転してくること、そしてなにより民意不在で意思決定がなされ、その後も県議会や県民へ十分な説明もないまま時間が過ぎ、同時に本庁や設計会社などの協議が着実に進んでいること等に対して、患者や保護者、近隣住民などは怒っているのであって、その機能の必要性を再三強調する姿勢には、きわめて違和感を覚えます。

周産期医療と救命救急医療の両機能を備えた医療機関は、現時点で埼玉県内では「埼玉大学総合医療センター」(川越市)の1カ所だけです。

荒川を挟んで右岸と左岸に一か所ずつ、将来的には県内に3~4カ所整備するのが望ましい、あるいは、県立小児医療センターに産科を併設しPICU・小児科を強化する必要がある、そして東日本大震災の教訓を踏まえ避難所となった埼玉スーパーアリーナの付近に医療施設があるのが望ましい等の判断に基づき、今回の移設決定に至ったと県議会や関係者への地元説明会で再三説明がなされてきました。

そもそも、周産期医療や救命救急医療は、県内でどのような状況になっているのか、今日はその点を検証してみたいと思います。


1.埼玉県の「周産期医療」の必要性

新生児医療、つまり母体をあずかる「MFICU」(母体・胎児集中治療室)、新生児をあずかる「NICU」(新生児集中治療管理室)や「GCU」(新生児治療回復室)が、産科と一体となって整備することが、本当に緊急に求められているのでしょうか? 

県内のNICUは、「埼玉県周産期医療体制整備計画」に基づくと、現在の計101床から150床まで増床する目標があり、49床不足しています。これに対して、県立小児医療センター(NICU15床+GCU6床+後方21床)で15床増加し、さいたま赤十字病院(NICU3床+GCU2床)で31床増、さらに埼玉医科大学総合医療センター(MFICU15床+NICU30床+GCU18床)で30床増など、埼玉県は大幅に増床する計画でいるようです。

小児医療センターのNICUを15床から30床へ倍増するなど、周産期42床を78床へ増加する算定根拠はなにか?

関係者によると、同センターの将来の受入件数を過去5年間の平均697.2件と同様と仮定、受入件数の減少率を0~10%減(少子化の影響を勘案)、病床利用率90%(2010年度、周産期・救急病床92.7%、一般病床75.3%)、平均在院日数37.4日(2007年厚生労働科学研究による全国の周産期施設の体重別平均在院日数を参考に算出)、のべ患者数23,468人~26,075人、一日当り患者数64.3人~71.4人などと想定し、それらを勘案した結果、必要病床数を72床~80床と想定しているとのことです。

<未熟児新生児科の入院依頼・お断り件数などの過去5年間(2006年度~10年度)の推移>
■総依頼件数: 722件、763件、657件、710件、634件: 平均697.2件
■受入件数: 418件、453件、373件、404件、451件: 平均419.8件(約60%)
■お断り件数: 304件、310件、284件、306件、183件: 平均277.4件(約40%)
■病床利用率: 96.8%、92.0%、85.9%、92.1%、92.8%: 平均91.9%
■平均在院日数: 35.0日、29.7日、34.0日、34.4日、30.6日: 平均32.6日

現在の県立小児医療センターで、約4割をお断りしている現実には驚きます。同時に、ここで注目すべきは、いずれも増加傾向にあるわけでもない状態であることです。

それなのに、さいたま赤十字病院を、現状の周産期5床(NICU3床+GCU2床)を、移設後は周産期45床(MFICU9床+NICU・GCU36床)に。MFICU9床を新設し、同時にNICU・GCUを7倍以上拡大。これは何を意味するのか?

実質県立小児医療センターがなくても、日赤病院単体で「総合周産期母子医療センター」としての要件(MFICU6床以上、NICU9床以上)を満たすことになります。併設する県立小児医療センターは、かねてから経営課題であった産科新設を断念し、日赤病院との連携で補う(病棟間に扉を設置し、救急車の搬入口は別)と考え、周産期医療に徹することになります。

県立小児医療センターは移設にともないNICUを2倍増、GCUは8倍増になります。でも、同センター単体では「総合周産期母子医療センター」とは言えず、あくまで「地域周産期母子医療センター」という位置づけに留まるのでしょうか。両病院の責任範囲などは、「覚書※」を締結し明確に規定することになるでしょう。

※「覚書」: 先行事例として、「茨城県立こども病院」(NICU+GCU等子供の一次・二次・三次救急に対応)と「済生会水戸総合病院」(MFCUなど大人を対象とした二次・三治救急に対応)では、責任範囲等を明記した「覚書」を締結しています。他に、「東京都立小児総合医療センター」と「都立多摩総合医療センター」の間では両者ともに都立病院であることから、その責任範囲は不明確と思われます。

NICUを兼ね備えた民間医療機関が、産科・周産期医療から今後撤退する見込みがどれほどあり、政策医療として県立病院で独自に産科を持たず、日赤病院と連携すると判断したのはなぜか? また、新生児の出生率が2015年をピークに減少傾向にあると予測される中、埼玉県内では今後上昇すると楽観的に考えているのか? さらに、県内で早産、高齢出産、不妊治療などのハイリスク妊婦がどれほど増加すると仮定しているのか? まだまだ疑問が湧いてきます。 


2.埼玉県の「救命救急医療」の必要性

今回の移設計画では、周産期医療の充実とともに、救命救急医療の必要性が強調されています。県立小児医療センターだけでも、PICU(小児集中治療室)を外科8床から外科・内科・重症救急患者として14床、HCU(準集中治療室・ハイケユニット)を20床整備すると言います。

■県立小児医療センター(さいたま市岩槻区): 
□現状: 一般240床、周産期42床(NICU15床+GCU6床+後方21床)、救急18床(ICU8床+CCU4床+専用6床)。
□2016年7月、新都心へ移設後: 一般204床、周産期78床(NICU30床+GCU48床)、救急34床(PICU14床+HCU20床)。

■さいたま赤十字病院(さいたま市中央区): 
□現状: 一般605床(産科30床)、周産期5床(NICU3床+GCU2床)、救急52床(専用52床)。
□2016年7月、新都心へ移設後: 一般?(産科?床)、周産期45床(MFICU9床+NICU・GCU36床)、救急?床(PICU?床+HCU?床)。

小児医療センターの救急病床を18床(ICU8床+CCU4床+専用6床)から34床(PICU14床+HCU20床)へ倍増する算定根拠はなにか? さいたま赤十字病院は屋上ヘリポートを設置した24時間対応の「高度救命救急センター」を目指すべく移設されるが、救急52床が何床に拡大するのか?(現時点では不明)

関係者によると、同センターの将来の患者数は、2010年度の循環器と外科第一(2:1看護)の実績が継続すると仮定するとともに、外科系救急でのべ840人(PICU対象221人)、1日平均2.3人、内科でのべ490人(PICU対象70人)、1日平均1.3人、重症救急患者でのべ378人(PICU対象54人※)、1日平均1.0人と推定、病床利用率90%と想定しているとのことです。

※2010年度の埼玉県内の小児重症救急患者は251人。火傷などの外因性の患者はその内43%と仮定し、さらに県立小児医療センターで50%を受入れると想定。251人×43%×50%=54人

<県立小児医療センターのICU稼働状況・2010年度>
■循環器(CCU4床←2:1看護): 利用者のべ1,427人(PICU対象者140人)、1日平均患者3.9人、利用率97.7%、平均在室日数10.2日、
■外科第一(ICU4床←2:1看護): 利用者のべ1,338人(PICU対象者288人)、1日平均患者3.7人、利用率91.6%、平均在室日数4.6日、
■外科第二(ICU4床←7:1看護): 利用者のべ1,279人、1日平均患者3.5人、利用率87.6%、

同時に気になるのが県内で対応できずに県外へ搬送している件数です。過去5年間では増加傾向にあるようです。PICUとHCUの整備により、どれほど減ると予測しているのか?逆に、新規増加分の外科・内科・重症救急患者の在院日数はどれほどか、増床の根拠となっていないか? など、この点でも疑問が湧いてきます。 

<県内で対応した小児救急医療と県外搬送件数の過去5年間(2006年度~10年度)の推移>
■県内対応: 平均831.4件(約85%)
■県外へ搬送: 145件、144件、150件、129件、164件: 平均419.8件(約15%)


3.埼玉県の「周産期医療体制」(ご参考まで)

<1>「総合周産期母子医療センター」:  MFICU6床以上、NICU9床以上有し、母と児に対する高度な周産期医療を提供できる医療機関。埼玉県内では次の通り、埼玉医大の1ヶ所だけです。

埼玉医科大学総合医療センター(川越市):一般産科31床、周産期63床(MFICU15床+NICU30床+GCU18床)。

<2>「地域周産期母子医療センター」: NICUを有し、比較的高度な周産期医療を提供できる医療機関。埼玉県内では次の通り、計9病院が担って頂いています。

<さいたま保健医療圏: さいたま市保健所管内>
県立小児医療センター(さいたま市岩槻区):周産期42床(NICU15床+GCU6床+後方21床)。
さいたま赤十字病院(さいたま市中央区):一般産科30床、周産期5床(NICU3床+GCU2床)。
自治医科大学付属さいたま医療センター(さいたま市大宮区):一般産科23床、周産期12床(NICU3床+GCU9床)。
さいたま市立病院(さいたま市浦和区):一般産科29床、周産期30床(NICU9床+GCU21床)。
<南部保健医療圏: 埼玉県川口保健所管内>
川口市立医療センター(川口市): 
一般産科30床、周産期30床(NICU9床+GCU21床)。
埼玉県済生会川口総合病院(川口市):一般産科25床、周産期5床(NICU3床+GCU2床)。
<西部保健医療圏: 埼玉県狭山保健所管内>
独立行政法人国立病院機構西埼玉中央病院(所沢市):一般産科40床、周産期25床(NICU9床+GCU16床)。
<川越比企保健医療圏: 埼玉県坂戸保健所管内>
埼玉医科大学病院(毛呂山町):一般産科25床、周産期42床(MFICU6床+NICU18床+GCU18床)。
<北部保健医療圏: 埼玉県熊谷保健所管内>
深谷赤十字病院(深谷市):一般産科42床、周産期13床(NICU3床+GCU10床)。

<3>「新生児センター」: 埼玉県内では次の通り、計5病院が担って頂いています。 

<さいたま保健医療圏: さいたま市保健所管内>
丸山記念総合病院(さいたま市岩槻区):一般産科22床。
<東部保健医療圏: 埼玉県春日部保健所管内>
越谷市立病院(越谷市):一般産科14床(婦人科を含む)、周産期6床(NICU6床)。
獨協医科大学越谷病院(越谷市):一般産科37床。
<西部保健医療圏: 埼玉県狭山保健所管内>
防衛医科大学校病院(所沢市):一般産科35床、周産期12床(NICU12床)。
<北部保健医療圏: 埼玉県熊谷保健所管内>
厚生農業協同組合連合会熊谷総合病院(熊谷市):一般産科15床。

<4>その他
<東部保健医療圏: 埼玉県草加保健所管内>
草加市立病院(草加市):一般産科31床、周産期5床(準NICU5床)。
<西部保健医療圏: 埼玉県狭山保健所管内>
瀬戸病院(所沢市):一般産科60床、周産期3床(NICU2床+GCU1床)。

<5>「周産期医療」を休止中の病院

埼玉社会保険病院(さいたま市浦和区):一般産科?床(他に休止中34床)、周産期10床(準NICU10床)。2008年2月以降、診療報酬上NICUを休止。2009年4月以降、小児科医不足により分娩取扱い休止。
春日部市立病院(春日部市):一般産科31床(他に休止中18床)、周産期5床(準NICU5床+他に休止中3床)。2009年10月以降、正常分娩取扱い一部再開。2010年4月以降、小児科入院一部再開(紹介のみ)。2015年移転予定。
北里大学北里研究所メディカルセンター病院(北本市):一般372床、救急8床(専用2床)。2010年11月以降、産科は休止中。
小川赤十字病院(小川町):一般252床、精神50床、救急37床(専用10床)。産科は休止中。


4.埼玉県の「救命救急医療体制」(ご参考まで)

<1>「高度救命救急センター」: 広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒などの特殊疾病患者に対する救急医療が行われる救命救急センター。埼玉県内では次の通り、埼玉医大の1ヶ所だけです。 

埼玉医科大学総合医療センタ-高度救命救急センタ-(川越市):一般916床、救急58床(専用58床)。1999年3月31日指定。
 
<2>「第三次救急医療体制」: 生命の危機が切迫している重篤患者に対応するもの。埼玉県内では次の通り、計7病院が指定され担って頂いています。

<さいたま保健医療圏: さいたま市保健所管内>
さいたま赤十字病院救命救急センタ-(さいたま市):一般605床、救急52床(専用52床)。1980年7月指定。
<東部保健医療圏: 埼玉県春日部保健所管内>
獨協医科大学越谷病院救命救急センタ-(越谷市):一般723床、救急34床(専用34床)。1998年5月指定。
<南部保健医療圏: 埼玉県川口保健所管内>
川口市立医療センター救命救急センタ-(川口市):一般539床、救急46床(専用16床)。1994年5月指定。
<川越比企保健医療圏: 川越市保健所管内>
埼玉医科大学総合医療センタ-高度救命救急センタ-(川越市):一般916床、救急58床(専用58床)。1987年4月指定。
<西部保健医療圏: 埼玉県狭山保健所管内>
防衛医科大学校病院救命救急センタ-(所沢市):一般754床、精神36床、感染症10床、救急36床(専用4床)。1992年9月指定。
埼玉医科大学国際医療センター救命救急センター(日高市):一般700床、救急100床(専用50床)。2008年6月12日指定。
<北部保健医療圏: 埼玉県熊谷保健所管内>
深谷赤十字病院救命救急センタ-(深谷市):一般500床、感染症6床、救急50床(専用50床)。1992年4月指定。

<3>「第二次救急医療体制」: 入院や手術を必要とする重症救急患者に対応するもの。埼玉県内では、14地区に計130病院が参画し、輪番制で担当して頂いています。小児救急医療には次の通り、計24病院が参画して支援を行って頂いています。

<さいたま市地区>
さいたま市民医療センター(さいたま市西区):一般340床、救急20床(専用20床)。
<中央地区>
愛友会上尾中央総合病院(上尾市):一般753床、救急17床(専用17床)。
北里大学北里研究所メディカルセンター病院(北本市):一般372床、救急8床(専用2床)。2010年11月以降、産科は休止中。
<熊谷・深谷・児玉地区>
医療生協さいたま・熊谷生協病院(熊谷市):一般50床、療養55床、救急4床(専用3床)。
壮幸会行田総合病院(行田市):一般354床、療養54床、救急55床(専用6床)。
深谷赤十字病院救命救急センタ-(深谷市):一般500床、感染症6床、救急50床(専用50床)。
<所沢地区>
独立行政法人国立病院機構・西埼玉中央病院(所沢市):一般325床、救急2床(専用2床)。
入間川病院(狭山市):一般140床、療養59床、救急9床(専用3床)。
<朝霞地区>
堀ノ内病院(新座市):一般170床、救急6床(専用2床)。
独立行政法人国立病院機構・埼玉病院(和光市):一般350床、救急9床(専用2床)。
志木市立市民病院(志木市):一般100床、救急4床(専用4床)。
<戸田・蕨地区>
蕨市立病院(蕨市):一般130床、救急10床(専用4床)。
東光会戸田中央総合病院(戸田市):一般446床、救急15床(専用5床)。
<川口地区>
川口市立医療センター救命救急センタ-(川口市):一般539床、救急46床(専用16床)。
済生会川口総合病院(川口市):一般380床、救急9床(専用2床)。
医療生協さいたま・埼玉協同病院(川口市):一般351床、療養50床、救急6床(専用6床)。
<東部北地区>
埼玉県済生会栗橋病院(久喜市):一般310床、感染症4床、救急4床(専用2床)。
土屋小児病院(久喜市):一般25床、救急2床(専用2床)。2012年6月~、年中無休(365日24時間運営)に。
<東部南地区>
春日部市立病院(春日部市):一般350床、救急8床(専用2床)。
越谷市立病院(越谷市):一般481床、救急12床(専用3床)。
草加市立病院(草加市):一般366床、救急23床(専用6床)。
協友会吉川中央総合病院(吉川市):一般189床、療養84床、救急7床(専用2床)。
<秩父、坂戸・飯能地区>
埼玉医科大学病院(毛呂山町):一般942床、精神137床、感染症6床、救急34床(専用6床)。
<川越、比企地区>
埼玉医科大学総合医療センタ-高度救命救急センタ-(川越市):一般916床、救急58床(専用58床)。

<4>「初期救急医療体制」: 埼玉県内では、「休日・夜間急患センター」は計28病院(休日・夜間は12病院、夜間は5病院、及び休日は11病院)、「在宅当番医」は計28郡市医師会管内、「休日歯科診療所」は13診療所、及び「在宅歯科当番医」は計5診療所が担って頂いています。