埼玉新聞より 21年2月21日

2012年2月21日(火)

県立小児医療センター、一定機能を存続

県議会で「一部機能を残す検討をする」と上田清司知事が表明した県立小児医療センター=さいたま市岩槻区馬込

 上田清司知事は20日、2月定例県議会の議案説明の中で、さいたま新都心の8-1A街区(さいたま市中央区)に移転を計画している県立小児医療センター(同市岩槻区)の跡地に、一定程度の医療機能や設備を残す考えを示した。地元住民や患者家族から存続を求める声が上がり、知事は「患者や家族の不安に応えるため、機能の一部を何らかの形で現在地に残す検討をする」と述べた。

 上田知事が移転後の跡地利用に言及したのは初めて。検討結果をまとめる時期は「未定」とし、「(存続を求める)要望が強かった。医師の分散に反対的な意見があるが、小児科医も確保できる。継続的に今まで通っていた患者を受け止めることは可能」と、地元住民らに配慮したことを明らかにした。

 県は8-1A街区に同センターとさいたま赤十字病院(さいたま市中央区)を移転、集約し、両病院の連携により、出産期の母子に高度医療で対応する総合周産期医療や救急救命医療の充実を図りたい考え。8-1A街区を医療拠点とする構想は、昨年夏の知事選で上田知事が公約の一つとして掲げていた。

 同センターは1983年、県内で唯一の小児専門の高度医療病院として開設。耐震性の面から建て替えが必要とされているが、リハビリなどに使用する「保健発達部」は98年に建設された。上田知事は「堅牢(けんろう)な建物が1カ所ある。若干の耐震補強で基本的に使える場所がある」と、既存の施設を活用することをイメージする。

 同センターの移転計画に関しては、昨年9月の定例県議会に岩槻区や蓮田市の住民が約4万5千人分の署名とともに存続を求める請願を提出し、採択された。蓮田市議会も存続を県に働き掛ける請願を採択。同12月には患者家族らが、移転中止を求める約1万5千人分の署名を県に提出した。「小児医療センター存続を求める患者家族の会」の藤田けい子代表は「声が届いたのはうれしい」としながら、「私たちが求めているのは、全ての機能を残すこと。なぜ新都心なのか、ということには答えていない」と指摘する。

 県病院事業管理者の名和肇氏は「医の倫理として今の患者を救わなくてはいけない。住民説明会などの意見を踏まえ、知事が一つの方向性を示した」と力を込める。今後は外来患者へのヒアリングなどをし、「どういう形がベストなのかを考える」という。

 移転計画については、医師ら外部有識者による検討委員会による会議が重ねられ、3月には一定の合意を得ることになっている。県は15年度の完成を目指しており、委員長を務める県医師会の金井忠男会長は「県が計画を大きく変更するなら、委員会に報告があるはず。報告がないということは、県で対応できる範囲のことなのではないか。今から振り出しに戻ると、計画自体が難しくなる」と話した。